
最近手に入れた絶版本にあった芸術家岡本太郎さんの文章が面白かったです。
岡本太郎(1911年 – 1996年)といえば日本では非常に有名な芸術家で、東京だとさまざまな場所でパブリックアートを見ることができますし、今でも著書が若い方に人気らしいです。
その岡本太郎さんが文章の中で「迷宮とは図形にあらず」「人生・即・迷宮」と言ってます。
彼が言うには迷宮とは「死と隣り合わせの人生」そのものだと。
そして、真の迷宮には出口はないと。
絵に描かれた迷宮は私たちにとって、対象物でしかなく、目をそらせば秩序だった日常があります。
しかし、実際には私たちの人生も世界も、まっすぐに進んでいるいと思ったら曲がっていたり、上に上がっていると思っていたら奈落に向かっていたり、
まさに迷宮に翻弄されているようなものです。
何か行くべき方向があるに違いないと思って、正解を求めて人に聞いたり、ググったりしたところで、真の迷宮には出口はありません。
迷うから「迷宮」なのです。
それが人生そのものだとすれば、出口を探すのではなく迷宮でどう生きていくかを考えるというのも手です。
ビジネスだとポジティブシンキングが良しとされますが、
ポジティブだろうと、ネガティブだろうと所詮は迷宮の中で、ポジティブに迷うか、ネガティブに迷うかのちがいだと思えば、どっちもどっちです。
逃れられない運命といえば悲劇的に聞こえるかもしれないですが、岡本太郎は、
悲劇は「本当は生きがいなのだ。」と言っています。
岡本太郎は「芸術は爆発だ!」と言って感情爆発な人だと思われてますが、実はソルボンヌ大学で哲学や人類学などを相当学んでいて、当時のフランスの哲学者達とも親しかったのです。
彼はある美術雑誌で、正しい芸術家のあり方についてこんなことを言っています。
「その為には、哲学的・論理的思考が根底になる。現実に生きている世界の様々なカラクリを洞察できるような知性の幅も、己に養わなければならない。」
人生は迷宮であるとし、混沌をそのまま肯定していた岡本太郎は一方で、非常に明晰な思考の持ち主でした。
明晰だからこそ、迷宮の在り方を受け入れる事ができたんだろうと私は考えてます。