5通目「風雅の便り」

美学を人生や仕事を変える道具に変える

 

美学は実社会には役に立たない学問、ただの空論だ、趣味の領域だというのが一般的な考え方でしょう。

たしかに、ただ美学を学んだだけでは、

  • 絵がうまくなるわけでもありません
  • 仕事のノウハウを得られるわけではありません
  • 学問や技術の資格を得られるわけでもありません

 

私自身も普通に本を読んだり、授業で美学を学んでも仕事には役に立たないと思います。

しかし、それは学び方を変えれば違ってきます。

つまり、「どう学ぶか」が一番重要なのです。

 

私が主宰する「麗知塾」では下記のことを重視してます。

 

まず第1に必要なのは学ぶ内容と質です。

美学も一般大衆向けや子供向けにすれば、「キラキラ、綺麗であればそれも美学だよ!」とお茶を濁して済みますが、そういうレベルの美学の学びでは人生や仕事を変えていくことは出来ません。

私が所属している東京官学支援機構では東大などの授業で行われている講義内容の資料を見ることができますが、本当の意味での純粋な哲学的なアクティブラーニングが行われているところは少ないのが現状です。

アクティブラーニングの重要性は言われていて学校教育でも最近始めっていますが、まだまだ一方通行の知識の伝達のみであることが多いです。

また、アクティブラーニングをどの程度の高抽象な哲学的な視座から行うかも問題です。

ただただ、いろんな人の意見を聞く、自分の言いたいことを言うというのでは大人がやるべきアクティブラーニングとしては質は低いと思います。

 

大人として人生や仕事に活かしたいなら、抽象度の高い方法で学ばないと無理です。

 

そして、今までお話してきた通り、すべての学問の根本的な質を探求しているのが哲学です。

哲学の一分野である美学を学ぶには哲学の要素は必須です。

 

そして、哲学は学問だけでなく自然科学、医学、思考、心などを探求しており、現代では他の分野を横断する学問(リベラルアーツ)として重視されてきています。

 

東京大学でも、文部科学省の公式文書でも哲学を中心にしたリベラルアーツの重要性が提言されています。

 

また、今後の日本の教育は専門性と同時に他分野と連携し、広い視野で研究していくべきだとしています。

実際、2022年の大学入試は自分で問いを考え、自分で答えを出すという総合的な思考力が必要となる問題が増えました。

 

 

このように、国の政策が学校教育を動かし、そこで学ぶ日本人の考えかたや文化に影響を与えていきます。

それにより、必要とされる人材も変化していきます。

 

 

私が所属する東京官学支援機構では東京大学、東京藝術大学を支援し、情報提供もいただいておりますし、他にも文部科学省の報告者などの情報が入ってきます。

また、海外に比べて遅れている日本の学術研究のデータベースの構築にも着手しています。

これは今まで行っている大学や国の学術団体への寄付活動にくわえて行っている事業です。出来上がったデータバンクは将来的には国の教育機関に贈呈することにしています。

そういった意味で民間でリベラルアーツのコンテンツを提供している他団体とはまったく別次元の圧倒的に上位の情報が手に入ります。

また、私たちは国の未来のために貢献することを目的としています。口先だけでない行動で示していきたいと考えています。

また、このような活動は大学の事務局、先生方、ビジネス関係者から高い評価をいただいています。

まさにそこで行き交う情報は未来を読む羅針盤といえるでしょう。

 

 

第2に学ぶ人の受け取り方のチェックです。

美学や哲学は目に見えない物を扱っています。

目に見えるものや答えが決まっているものであれば、自分が正しく受け取っているかが分かります。

 

しかし、目に見えない物は自分では正しく受け取っているつもりでも、勝手な解釈でゆがめて受け取りがちです。

そうすると、いくら質の良いコンテンツがあっても、知らず知らずに、枝葉の事柄なのにそれを本質だと思い込んでしまう間違いを犯してしまいます。

 

これを防ぐには、自分一人では無理です。

個人の客観はしょせん「主観」でしかないからです。

ですから、例えば自分で研究テーマを見つけて自分で答えを出していく大学院では教師と生徒が対話をしながら学びを深めていくのです。

私自身も「東京リベラルアーツクラブ」にて、メンバーとともに双方向のアクティブラーニングで哲学や美学を学んでいます。

そして、そこではインプット以上にアウトプットを重視されています。

それは学ぶだけでは日本に貢献するには不十分だからです。多くの人に人文知の重要性を伝えていくためにみなで研鑽しています。

 

 

第3に、仕事に活かすなら、美学だけでなくビジネスの経験がある人から学ばないと応用は難しいです

これも当たり前ですが、美学や哲学を学べばビジネスがうまくいくというわけではありません。

もしそうなら、世の中の美学者・哲学者はすべてビジネスマンとして成功するでしょう。

しかし、そうはならない。それは、学ぶだけ、研究することとそれをどう仕事に活用するかはまた別問題だからです。

つまり、

重要なのは美学という机上の空論を実業にどのように落とし込むかです。

ある意味これができれば、どの分野の仕事であっても、いくらでも他者との差別化ができますし、オリジナルのアイデアなどは無限に作れます。

 

ビジネスといっても会社員ではなく、自分の采配で仕事をしている人でなければ意味はないでしょう。

組織の中では組織の論理で物事が動いていきますが、社会や世界はもっと混沌としたものですから。

 

また、仕事だけでなく

人生の悩みや問題も、問題自体を消すことが可能となります。

 

それを「問題である」と判断しているのは人間です。

広い視野と高い視点で物事を見ることができるようになれば、「問題だ!」と思っていたことが実はたいした事がないとか、実は別の事柄のほうが重要だったということが解るようになります。

そして、社会の裏側や仕組みがあからさまに見えるようになるので、つまらない物に騙されたり、影響を受けたりすることなく、方針を立てることができるようになります。

 

これまでいろいろ仕事に美学や哲学をどう落とし込むかをお伝えしてきましたが、最後に言いたいのは

 

本当は美学・哲学というものは

仕事に役立つか?という基準で判断されるようなチープなものではないということです。

 

美学・哲学を仕事に役立てようとすれば、それは可能です。しかし、それは可能性の一つでしかありません。

美学・哲学に代表される人文知はビジネスや経済面という狭い判断基準で評価しきれないものです。もっと大きな枠組みのもので、より価値があるものです。

 

私自身、美学・哲学・芸術を学び続けたのは仕事に役立てるためではなく、純粋にもっと世の中のことを知って、私が理想とする人間に近づくためです。

どういう人間像を理想とするかは人それぞれでしょうが、私は人文知を学ぶことで、様々な人間の生きざまを知ることができましたし、世界の素晴らしさを知ることができました。

それこそ本当の教養であり、自分の人格を高めることになると思っています。

そういった物の見方や価値観が私の人となりを形づくり、それが巡り巡って仕事の人間関係や信頼へと確実につながっています。

 

ですから

あなたの思考が変われば世界も仕事を見る目も変わります。

 

美学・哲学を学んでいけばいつの間にか芸術や文学、科学、政治、経済のことも興味を持てるようになりますし、より深く理解できるようになり、あなたの人格、人柄も高まります。そうすれば、必ずそれは仕事の成果に結びついてきます。

逆に言うと、これほどの情報社会になれば、あなたがどんな仕事をしていようと、最後は「どういう人間であるか」という差別化でしかないと考えています。

この世にあなたが一人しかいない以上、あなたが磨き上げた見識や人格は世界にただ一つの唯一無二のコンテンツとなります。

 

今回で「美」を知るうえで前提となることを書いたお手紙は終わりにいたします。

今後は間隔をあけながら、さまざまな「美」の周辺についてお手紙を出していきます。

他にもお知らせや有意義な情報があれば随時お伝えしたいと思います。

「美」について。もっと学びたい、自分の仕事や人生に応用していきたい方には私が主宰する「麗知塾」をご案内しています。ご興味がありましたらご一読ください。

 

麗知塾説明会&ミニ講座

参加される方は出来るだけ「風雅の便り」のメール講座(全5回)をご覧になってからご参加ください。

参加費:3000円(事前振り込み)

場所:
【対面】東京 渋谷or新宿又は【オンライン】Zoom

開催時間:2時間

定員:
【対面】各3名(先着順)、【オンライン】個人面談

※お申し込み後に開催場所、ZoomURLはお申込み後お知らせいたします。

 申し込み期限:開催日の2日前まで

 

麗知塾の内容

講座:シーズン1(6回),シーズン2(6回)

  • 個別面談(各シーズン6回 対面orオンライン)講座の疑問点、仕事への落とし込み、差別化されたコンテンツ作成、アドバイス、その他。
  • 教養基礎講座(解説動画とテキスト資料)
    (基礎として知っておくべき哲学、美学、芸術学をメインに提供)
  • 人文科学・哲学・美学研究における資料
  • 課題の提出と個別フィードバック
  • 主宰者の哲学・美学・芸術に関する思考コラム
  • その他、随時塾生の親睦会等を開催
  • シーズン1&シーズン2を受講し、課題提出を終了した方で、希望者には修了書を発行(デジタル)

 

期間:1年間(シーズン1&2)

料金:説明会でご案内いたします。塾の内容を確認していただいて、必要な方だけに入会していただきたいと思っています。押し売りはいたしません。

 


【主な講座内容】

■教養基礎講座(シーズン1)

I、理想の美、理想の人間はあるのか?
~理想の自分を追い求める人へ

II、人の痛みや感動を知ることができるのか?
~心理学、感覚の盲点について

III、文系学問は実社会に役立つのか?
~科学的アプローチの死角について

IV、人はなぜ快楽(美)を求めるのか?
~消費社会のビジネスと死との共鳴について

V、弱肉強食の現実社会をどう生きるのか?
~自己成長と妬みの構造について

VI、人生は自分で決めることができるのか?
~人間が生まれながらにもつ自由と罰

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■教養基礎講座:シーズン2

VII、宇宙は神が作ったのか?そうでないならどのように?
~神と芸術の共存関係について

VIII、マイノリティーは社会的弱者か?
~優劣を逆転させる思想

IX、本当に客観視は出来るのか?
~言葉と感性の間にある曖昧さについて

X、私達の世界はどこまでリアルなのか?
~言語の呪縛から逃れられない人間について

XI、基準のない混沌の世界をどう生きるか?
~固定点を必要としない世界観について

XII、哲学や芸術の終焉?
~終わりの始まりを生きる私たちにとっての教養

 

 

現代は科学的なアプローチが支持されている時代です。

科学といえば、人間でさえもモノととらえ、数値化することで客観的な立場で研究することを重視しています。

しかし、究極的には人間は「客観視」などできません。そこにあるのは客観視を目指している「主観」です。

数字やデータに意味を与えるのは人間だからです。

「主観とは何か」を極限まで追求することで、逆に人間が可能な究極的な客観とは何かを理解できるようになります。

この塾ではは科学の有用性を認識しながらも、その限界を明確にすることを美学・哲学を通して行い、自然科学と人文学、客観と主観を包括的に見つめる視点を育成していきます。

また、縦割りの日本のアカデミズムのありかたから脱却すべく、大人が持つべき真のリベラルアーツを美学・哲学を基盤とし提供します。

 

教材は東京官学支援機構から情報提供を頂いた一般では手に入らない貴重な資料と基本的な哲学・美学の解説とします。

 

この塾では知識を増やすことではなく、自分の人生や仕事に活用していただき、社会や国に貢献していただくことを重視しています。

そのため自分の頭で考える本当の思考力を磨くためアウトプットも重視しています。

最初は難しく思われるかもしれませんが、何事も初めは初心者です。

一人ではなかなか理解できなくても、マンツーマンであなたの思考力の盲点や成長点について見極め、サポートいたします。

 

哲学・美学の素晴らしいところは、学べば学んだ分だけ視点が高くなり、視野が広がることです。そして、その視座はあなたが手放さない限り戻ることはありません。

まさに、生涯の指針となるクオリティーのものです。

是非、知と感性を磨き上げてより高い次元の「真善美」をめざしていきましょう。

【塾長プロフィール】

石橋ゆかり

麗知塾代表/東京官学支援機構理事

京都市内の京表具師の家に生まれる。同志社大学文学部美学及び芸術学専攻。その後中退し、東京国立能楽(三役)養成所に入所。

6年間能楽太鼓方(金春流)の人間国宝の師匠の下で修業し、修了。

1995年サルサダンス教室を開校。のべ9000人以上にダンス指導(2022年現在)。

2019年アートスクール「美学校」に入校。2年間在籍。

2022年 東京官学支援機構 理事、東京リベラルアーツクラブ(TLC)公認リベラルアーツプロモーター

美学、哲学、芸術学、アートの学びを長年継続。

2022年よりアカデミズムに根差した”美と知”の普及活動を本格始動。
麗知塾を開始


 

なぜ、私がこのような活動をしているのか

私は小さい頃から、「『美しい』って何だろう?」と考えてきました。生まれたのが京都で両親に連れられて、よく美術館や神社仏閣に行っていたせいかもしれません。

そんな私が今回このような活動を始めた理由は誰かが美やアートの本当の凄みをきちんと伝えなければ、と思ったからです。

 

実は私は数年前、「アートは世界の本質を伝えてくれますよ」ということを広めようとしていました。

しかし、表現にかかわる仕事をしてきて、長年一流の先生の授業を受けてきたとはいえ大学教授でもない、大学院で正式に学んだこともない私がこんなことを教えていいのだろうか?という思いがありました。

私もビジネスマンですから、他のコンテンツならそんなことは思わなかっただろうと思います。

しかし、「美」や「アート」は私にとって特別な存在なのです。

私は長年学び、経験していく中で芸術、文化が本当は儚いものであり、それが古代から現代まで奇跡的に途切れずに現代まで続き、私達が受け取ることができていることに気づかされました。

先人たちの「美」に対する真摯な態度にただ圧倒され、自分の小ささを思い知らされてきました。

リスペクトする気持ちがあまりに強く、
私などが「美」や「アート」にかかわるなど、とんでもない事柄だという気持ちがあります。

そのため、「美」や「アート」の本質を広めるには、私などよりも適任者がいるのではないかと思っていました。

 

そうこうしているうちに、「デザイン思考」「アート思考」「対話的鑑賞法」など、アートを現実に落とし込むコンテンツを販売する人や企業も現れ、それに大学の先生方も協力なさっているということを知り、「それなら、私が活動をしなくても、そういう人たちがきちんと伝えたほうがいい。

そのほうが習う人にとってもいいし。」と思いましたので、自分の考えを広める意義もないと思い、やめてしまいました。

 

しかし、残念なことに様々なアートコンテンツが、結局、「美」や「アート」の本質を伝えることよりも、「楽しく!誰でも簡単に!みんなに親しんでもらえるように!こんなに役立ちます!」というアピール満載で紹介されます。

「美」や「アート」商品化され、薄められ、拡散していきました。

 

私は本当に、心の底から失望しました。

 

「なんでこんなに素晴らしいものをそんな売り方で、そんなに中身を薄めて人に紹介できるんだ?」私にはこれは「美」や「アート」に対する裏切りのように思えました。

と同時に、真摯に研究に没頭されている先生方やアーティストに対する裏切りのようにも思えました。

 

でも多分、そういったアート関連商品を売っている方々に悪意はないのです。その価値をより多くの人たちに伝えたい!という熱意があって、このような形になっているのだと思います。

 

「美」や「アート」の研究者、専門家といえどもビジネスでは素人です。マーケティングのプロだ!という人から「こうしないと世の中に広まりませんよ。」と言われると、今まで効果のあった、手あかのついた「楽しい、簡単、すぐに」というマーケティングの打ち出し方で商品を売るしかないのだと思います。

それが、「美」や「アート」の本質とは真逆のことでも、一般に広めるには仕方がないと。

 

でも、そのようなことを放っておくと大人の事情や思惑でゆがめられた「美」や「アート」が、本当なのだと一般の人は誤解してしまいます。

「その程度のモノなのね。」と。

ビジネスはきれいごとだけではないことも、十分承知しています。しかし、この問題は個人的に好き勝手に消費して、汚して、あとは知らないという物でもないと思います。

こう思ってしまったら私はどうしたらいいか?

 

常々「文句ばっかり言って、何にもしないような生き方はしたくない。」と考え、もうこれは自分でやるしかないと決断しました。

 

やるからには、出来る限り「美」や「アート」の本質をゆがめたり、自分の都合のいいように作り変えたりしない、そう誓いました。

正直言って、分かってくれる人は少ないでしょう。難しそうだからと敬遠されることも想像できます。

 

でも、一人でも「美」や「アート」の本質について知りたいという方に、私の今までの知識や経験が役立つのなら、やる意味があると考えています。

 

私ごときが「美」や「アート」という人類の遺産に対してできることなど、塵(チリ)のようなものですが、知りたいという方がいる限り、全力でお伝えしていこうと思い、こうしてあなたにお話ししているというわけです。

 

幸い、私は「日本の人文知を守る」という理念のもと寄付活動・研究者支援・普及活動を行う「東京官学支援機構」の理事に就任することになりました

 

私たちの団体は大学に代表されるアカデミズムに貢献しますが、それに服従するわけではありません。

究極の目的として、国のために貢献することを重視していますので、アカデミズムに苦言やアドバイスができる立場を確保しています。

そのためにジャーナリズムの役割をにない、出版やデータベース構築を行い、アカデミズムと同様かそれ以上の最上位の情報にアクセスできる立場を確立していきます。

 

 

これにより、より正確で、高度な「美と知」に関する情報が手に入るようになりました。

おかげで人に伝える際も、自分の主観で「美」をねじまげる可能性もほぼ無くなります。

東京大学、東京芸術大学からも情報提供をいただいている団体ですので、日本における教育や文化への施策の情報も入ってきますので、日本独自の問題点も高い視点から皆様にお伝えすることができます。

 

このような日本の人文科学を支援する団体に所属していることで、巡り巡って私の故郷の京都や日本文化を支えることになるというのは、

私の大きなやりがいとなっています。