コーチングで「自分探し」はするな

本当の自分、本当にふさわしい仕事、本当の人生・・・。多くの人は自分の「本当」を探したがり、コーチングやカウンセリングを受けます。
しかし、そんなことをしても「本当の自分」を見つけることは出来ません。別の見方が必要なのです。

なぜ、本当の自分を探したがる?

「本当の自分」を探している、求めているということは、裏を返せば今の自分を偽物だと考えているということです。

なぜ、そういうことを思うようになったのか?

それは、今の自分に不満や不安があるからです。

世の中に自分だけがいて、他人が存在しない世界なら、「今の自分は偽物だ」などという考えにはならないはずです。

自分自身への疑いは他者によってもたらされるからです。

他人の有り様を見て、自分とは違う生き方をしているなと気づきます。その他人が不幸そうなら気にも留めないのでしょうが、自分よりもなんだかとても楽しそうで、幸せそうだと、「自分は間違っているんじゃないか?」と疑問を持つようになります。

こうして、「自分は間違ってる、正しい自分にならないと!それが本当の自分なんだ!」という言う訳です。

もうこの時点で、冷静な視点を失っています。

本当の自分がよりよい自分であると思い込んでいる点です。

本当の自分が今の自分よりもっと悪い可能性だって、十分に考えられるはずです。それなのに、そういう負の面には一切目をむけず、自分に都合のいいことばかりを前提にして考えている点で、すでにこの「自分探し」という設定自体が、妄想であることを示しています。

本当の自分など存在しない

実際は「偽物の自分」が本物のあなた自身であり、あると信じている「本当の自分」の方が妄想であり、偽物なのです。

こう言われると辛い気持ちになる人も多いでしょう。

今の自分が本物で、「本当の自分」なんてものがないのだとすれば、私はずっとパッとしない人生を歩むのか?思い描くような、幸せそうな他人のような人生は歩めないのか?

そうではありません。

私が言いたいのは今の自分を無視して、ありもしない「本当の自分」をもとめるのではなく、今の自分を変えていかなくてはいけないということです。

キツイことをいえば、「自分探し」をしている人は、今の自分を変えることから逃げている人です。

今の安定した状況をキープしたい!という気持ちは危険をさせるための人間の本能です。こういった本能に逆らうことは非常に困難です。

「自分を変える」ということは、あなたが考えている以上に辛い、困難なことなのです。どうすれば自分を変えずに、楽に生きていけるか?、これを必死にキープするために、人間はつじつま合わせの行動しているのだといえます。

「本当の自分」という物を想定することで、今の自分を変えることから目をそむけ、自分探しをする方が実は楽なので、みんな「本当の自分」を探しつづけるわけです。

目標設定が妄想設定になる

コーチングは目標達成をサポートすることを目的としています。
しかし、残念なことに目標設定の質をきちんと検証することをしません。

クライアントが望む目標設定を無条件に受け入れます。中には優秀なコーチなら目標自体の修正を提案出来るでしょうが、その目標設定を生み出した原因をクライアントの内面や心理学の知識という、狭い世界観で修正している程度がほとんどなのです。

人を導く人にとって、目標達成、それ自体が目的になってはいけません。

無意味な目標をたてて、その目標に達成したとしても、価値はありません。

「本当の自分を探す」なんてことは無意味な目標設定の一つです。

しかし、多くのコーチはそのことを指摘せず、高い料金をとって、クライアントの要望に応え、本人が一喜一憂しながら「自分探し」で人生の時間を無駄に浪費することに気が付かないか、知っていても知らんぷりをしているのです。

クライアントは自分が無意味な目標に向かって努力していると勘違いしたまま、自分を変えることに本当に向き合うこともありません。

「自分探し」は本質的に自分自身に向き合わない思考なので、結構楽しく、ワクワクしいものなのです。本人は大きなチャレンジをしているつもりでいるのでしょうが、その実態はレジャーと同じなのです。

「質問」のワナ

もともと「自分探し」というのは、視野が狭くなる原因なのですが、これをコーチングで行うともっと問題が起こります。

例えば「どうすれば本当の自分を探すことが出来ますか?」などと、「自分探し」について質問され、自分で答えることで、大本のそもそもこの問題提起自体について考えるのではなく、どうすれば「自分探し」ができるのか?のほうをより重要に感じるように、自分を訓練することになってしまします。

コーチングを受ければ受けるほど、「自分探し」という考え方を自分に染み込ませる結果となってしまうのです。

質問というのは、それがイエス、ノーで答えられる様なものから、オープンクエッションと言われる幅広い問であれ、じつは答えよりも拘束力があります。

質問というのは、相手を自由を尊重しているように、普通は考えられていますが、実は相手を束縛する面が非常に大きい。

質問をしている時点で、質問者は世界を自分の解釈で切り取って質問しているからです。

それに、答えるという行為は、その質問者の世界観の枠から出ることが出来ないのです。

コーチングなどの、質問に答えながら問題解決するという手法は、質問者が圧倒的に人間や世の中の仕組みを高いレベルで知っている必要があるのです。

それはコーチングの技術や心理学の範疇だけではなく、もっと広い意味での人間理解と世界の見方です。

自分探しより、世界の構造を知る

コーチングが無意味な問題解決を助長するものにしないためにはどうすればいいのか?

私は、コーチや相談を受ける側の思考力を高めることが一番大切だと考えて、メタ・アーチングを始めました。

質の高い質問をするには、それを作り出す思考力が無ければ話になりません。

そして、ただクライアントの方に同調するのではなく、その人がはまっている考え方の偏りを指摘し、全く別次元の思考法を提示できなくてはいけないと思います。

私もメタ・アーチングを始める前にそういったことを教えてくれるコーチングや心理学の講座を探しましたが結局無く、見つけたのは哲学とアートの分野で見つけることが出来ました。

同じ業界の中から、それを疑問視し、改善するのはなかなか難しいですが、他業種から見れば、その業界の常識など関係ありませんし、曇りのない目で判断が出来るようになります。

これはコーチングの業界でもいっしょです。

古いコーチングを否定し、新しい視点をとりいれることで、より質の高い「人を導き、サポートする」という目的が達成できるのだと私は考えます。